信頼関係をつくるということについて





信頼関係をつくるということについて


教育に長く携わる中で、気づいたことがある。
それもかなり長い時間がたった後で。


生徒と接する中で、非常に大事なことの一つは信頼関係だ。


若く傲慢だった時、生徒は私のいうことに従うべきだと思っていたし、
また、未熟な生徒たちを頭から信頼することはできないと考えていた。


ある時期に、本の中にこんなふうなことが書かれていたのを見た。


「教師が子どもに対して不信感をもっていて、それなのに、子どもに対して『私を信頼しなさい』というのはバカげています」(『クラスはよみがえる:学校教育に生かすアドラー心理学 』)


生徒との関係が上手くいってなかった時だったのか・・・この言葉は凄く心に響いた。本当に、とてつもなく響いた。似たような言葉を探した。

クラスはよみがえる:学校教育に生かすアドラー心理学
クラスはよみがえる:学校教育に生かすアドラー心理学
創元社



ボルノウ
「子どもは教師の信頼に学んで自分自身への信頼感をつくっていく。そして自分への信頼感の中で自分の良さ、自分の力が見えてくる」
「教育の第一の力量は、子どもをあれこれ判断する力ではなく、子どもを信頼する力である」


エマソン
「教育の秘訣とは、生徒を尊敬することにある」


これらの言葉は、手帳の一番最初に書き留めてある。子どもへの、信頼・尊敬の気持を失いそうになる時に、自分自身を勇気づけてきてくれた言葉である。


また、同時期に一緒に仕事した先輩教師にも大きく影響を受けた。


中学校配属になり中学校1年の一つのクラスを先輩教師とともに二人担任という形で担当することがあった。


驚きの連続であった。
その先輩教師は、朝の朝礼、また1時間のホームルームで話す内容なども、いつも原稿をつくってから、教室で言葉を発するのであった。


なので、私もそれにならって、話す内容を先輩に伝えてから話すようになった。生活指導の話をするときなどは、かなり慎重に原稿をつくる必要があった。でもそれは、とても丁寧にその問題について考える機会となった。


ある時、クラスにお菓子の包み紙が落ちていた。学校にお菓子をもってくるのはルール違反である。
その日は、先輩教師の担当の日であった。私は教室の後ろに立っていた。先輩教師が、そのことについて話を行い、そしてこう言った。
 「みなさん、こんな4組でいいのでしょうか」


その時生徒たちの多くの首が、一斉に横に振られているのを見て、何ともいえない気持になった。


先輩教師の言葉が生徒の心にしっかり届き、また生徒の先輩教師に対する信頼感がいかに大きいかということを実感した。


また夜の祭りについて、私は
 「夜祭りに行くのはルール違反で禁止だから、見回りの先生がいっぱい出てるから見つ  かるぞ!絶対行ったららだめだぞ」というような指導していたのだが・・・・


先輩教師は
 「もし夜祭りに行く場合には、あなたの身を全力で守ってくれる保護者の方と必ず一緒に行くようにしてくださいね。危険ですからね。」と生徒に伝えていた。


先輩教師の理屈の方が、ルールの本旨にそっていると気づき、いかに私が生徒に対する不信感を前提に話していたかということを恥じた。


生徒は、都度都度教師のところにやってくる。
先輩教師は言う。「生徒が大人の教員に近づいて話をするっていうのは、緊張もし、また勇気もいることだと思うんです。私もそうだったし。」


「だから、ほんの30秒でも1分でも、その短い生徒と接する時間を大切な時間にしたいんです」


目から鱗だった。コーチングを学んでからは、少しの接触も勇気づけのいい機会という捉えができるようになったが、この当時はまったくそんな気持ちは持っていなかったので、本当に驚いた。


生徒から愛され、絶大に信頼されていた先輩機教師。よくNHKに密着取材でもしてもらいたい!なんてことを考えた。


その先輩教員との1年間は、とても大きな財産をえることができた機会だった。こんな、先輩からの学びや、信頼に関して出会った言葉たちは、その後の教育活動の基盤となるものとなった。


このテーマは、「信頼関係をつくるということについて」だったが、まずその第一歩として、先に生徒を信頼するということの大事さを挙げておきたいと思う。
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